すべてはフロッピーの中に



『プラスティック』井上 夢人


 いや、これまたすばらしい作品に出会ってしまったな。井上夢人にはもう何回無四球完封を謙譲しているのかってくらい、毎度まいどやられっぱなしだよ。テーマやバックボーンはごくごくありふれたものかもしれないけど、この舞台設定というかプロットの妙、巧妙な仕掛けの数々に、手も足も出ないとはこのことだね。やれやれ。


【以下ネタバレ注意】


 僕はこの作品を読み進めるなかで、ダニエル・キイスの『24人のビリー・ミリガン』を思い出しちまったね。『24人のビリー・ミリガン』の方はもちろんノン・フィクションさ。でも、フィクションであるこの『プラスティック』の方がリアリティを感じたね。うん、これはまじだよ。「ノン・フィクションというのは原理的に現実をフィクショナイズすることであり、フィクションというのは虚構を現実化することなのだ」。村上春樹もこう言ってるくらいだしね。



『24人のビリー・ミリガン〈上〉』ダニエル キイス