「仕事がいそがしい」


 僕が金沢に帰ってきてからまったく聞かなくなった言葉のひとつに、「仕事がいそがしい」ってのがあるんだよね。まあそういう環境にいるってことは一長一短だと思うけど、僕はマイ・ペースを好む生き物だから、大よそ良しとしているわけさ。


 東京を東京たらしめてるのは、人口の多さに尽きると思うんだよね。まじ、いろんな人がいるわけさ。東京に行って、これほどまでに多種多様な人間が存在することを知ったときは、世界びっくりニュースにでも連絡しようかと思ったくらいだよ。「すいません、びっくりしたんですが」ってね。だから、当然そんなとこにいたら、生きていくためにサバイブすることが頭の中の大多数を占めることになっちゃうと思うんだよね。その結果がいそがしく仕事をするってこと以外にないんだと思うな。僕としてはもうそんなのはごめんだね。息が詰まっちゃうよ。比喩なんかじゃなくてね。もっとリラックスしなよって言ってやりたいよ。


 もちろん僕は日夜働く人々を非難しているわけじゃなくて、まあ正直に言うと、もうこいつらと同じ次元で勝負したくないってのが本音だね。僕はもともとがんばって何かに取り組むタイプの人間じゃないんだよ。だからね、やることがないから猫に話しかけてるみたいな人生がちょうどいいと思ってるんだよね、僕は。そういうのが今一番幸せだと思ってるんだよね。君もそう思わないかい。