ヒールではなくヒーローだった頃の清原和博



『ルーキー』 山際 淳司


 僕が桑田・清原なら桑田派だってことは何度も説明してると思うけど、この世の中に清原に関する書籍は数多くあれど、桑田に関しての文献はあんまりないんだよね。残念ながら。でもまあ、清原に関する書物もPL時代のことが書かれているなら思わず手に取ることは多いね、実際のところ。ついこないだのNumber清原特集だって迷わずレジスターまで持ってったしね。


 でね、今回はこの山際淳司という神ライターがその昔、清原について書いた書簡があると聞いて、疾風のように注文したんだ。山際淳司の『スローカーブを、もう一球』はすばらしいってことはもうすでに紹介してると思うけど、この『ルーキー』も勝るとも劣らぬ改心のノン・フィクションだね。君もぜひチェックしとくといいよ。


 このルポはさ、清原がルーキーだった時代、つまりは86年に書かれたものなんだよ。まあそんなもんタイトル見ればおおよそ検討はつくと思うけどさ。で、何がすばらしいって言うと、このルポの中に清原のインタビューがまったく登場しないことなんだ。いや、ちょっとくらいはあったかもしれないな。まあとにかく、ほとんどないんだよ。じゃ、何が書かれているかと言うと、清原と対戦したパ・リーグのピッチャーや選手、そして甲子園やPL学園で清原と接点を持った人物の話を聞きだすことで、大物ルーキー清原和博という人物を浮かび上がらせているんだ。清原に打ち負かされたチーム、清原をねじ伏せた投手、清原と勝負できなかったエース……。プロアマ問わず、そういった人間に清原との思い出を語ってもらうことで、当時のヒーローの姿を描き出してるわけさ、この山際って神はね。


 この手法はすばらしいよ、まじで。他人が語るからこそ、その人のすごみや人柄がにじみ出ているってやつだよね。案外、人間って自分のことはよくわかってないもんだからね。アスリートでもタレントでもその人のインタビュー記事ってのは、読んでてもときとしてつまんないことがあるのも、インタビューされてる方が自分のことを聞かれ疲れてて、めんどくせとか思ってる部分もあるからだろうね。何べんも同じことばっか聞きやがってうるせーな、って。僕が仮に天才バッターで、毎日マスコミ連中に囲まれたらそういう風に思っちゃうね、絶対。


 つまりさは、君がもし清原が背番号3をつけている時代を知っている人間なら、この本は読んでおくべきだってことだよ。背番号3の清原は、本当に完璧なまでのスラッガーだったんだよ。知ってるだろ、甲子園での大飛球を、西武球場での右中間へのライナーを。


◆[雑記]すべてのアスリートのために<Not Found (2008.06/03)