移動時間


 僕はね、今の通勤時間は約10分なんだよ。つまりさ、家を出て車に乗って10分くらいしたら会社についてるってことだよね。


 でもね、東京の頃の通勤時間、まあ移動時間ってもっともっと長かったわけだよね。国分寺から茅場町に通っていた頃はドア・トゥ・ドアで70〜80分くらいあったわけさ。また、その頃、親と一緒に東京ドームに行ったときの帰り、つまり飯田橋から国分寺まで電車で移動すると、両親は「移動だけで1時間もかかるか……」と随分おつかれの様子だったんだよ。まあ、金沢だったら1時間の車移動で能登島くらいは行けるからね。


 つまりさ、東京ってどこに行くにも田舎じゃ規格外とも思えるほどの時間をかけてたわけなんだよ。なんの疑問も持たずにね。でもね、その移動時間のうちでも、文字通り息が詰まるくらいのたくさんの人や情報に触れているわけだから、決して退屈なんてしなかったわけなんだよね。昔書いたと思うけど、電車に乗り合わせたありとあらゆる人種や、貼りめぐらされた多種多様な広告とかが目に入ってくるからね。


 まあ別にこの話に特別なオチなんてものはないんだけどね。ただ、「時間は誰にでも平等」なんて言うけれど、その存在感みたいなものは、生活する場において随分と違うものなんだなと思ったわけだよ。