ガムの話


 ガムって不思議な食べ物だよね。いや、ちょっと待てよ。ガムって食べ物なのかな。噛み物ってのも変だしな。ま、そういう具合に不思議なモンだってことだよ。


 そもそもさ、何で最終的には飲み込まずに吐き出す物を口に入れるのかわかんないよね。「ガムは飲まずに噛み続ける」というスタイルはとっくに市民権を得ているから今更誰も疑問に思わないかもしれないけど、最初にガムを開発して、企画会議で提案したときは「おい、これはどのタイミングで飲み込めばいいんだ? ん? このまま噛み続ければいい? そんなクレイジーなお菓子があるか、バカモン!」と一喝されたに違いないね。かわいそうだよね。ここまで世界的にヒットする商品なのにね。でも画期的なことをやるには、最初はなかなか周囲の理解は得られないもんだよね。まあ全部僕の勝手な憶測に過ぎないけど。



 あとさ、ベトベトくっつくわけじゃん。ベトベトっていうかネチャネチャっていうか、とても不愉快な具合にね。で、道端とかに黒くなって引っ付いてるの君も見たことあるよね。駅なんかじゃ、必ず係りの人が、ヘラみたいのを持って、一所懸命カツカツ剥がしてるよね。誰かに踏まれて道に引っ付いたガムを。こういうのってさ、所構わずぷかぷかタバコ吸ってるのなんかより、よっぽど迷惑行為である気がするんだよね。ガムを道端に吐き捨てるってことがだよ。それなのに、ガムに関しては何の規制もできずに、そもそも疑問の声すら挙がってないってのは、バックに何かの組織か政党でも付いてそうだよね。ガムのバックにね。


 そういうようなことをね、仕事中にガムを噛みながら考えていたんだ。口の中がさみしくなるとガムってのは、いい具合に間合いを埋めてくれるんだよ。間合いをね。なかなか役に立つんだよ。うん、ガムって不思議だね。