労働する側


 i文庫で小林多喜二の『蟹工船』を読んだんだ。


 一時期のブームは過ぎ去ってしまっているかもしれないけど、労働者という視点から描いた生々しい一面は普遍的なもんだと思ったね。


 でね、思ったんだけど、ここ数年「結局生きていく上でもう学歴は関係ない」みたいなことを言われてるけど、僕はまったくそんなことはないと思うんだ。実際に一定規模以上の会社に属すると、否応なく、単なる労働力とその労働力を管理する立場とにきっぱりと分けられちゃうんだよね。で、その際の大きな基準となるのが学歴なんだよ。


 でね、問題は、脳ミソがない人間ってのは、自分が労働力側、つまりは単なる駒・兵隊側に区分されてしまったこと自体気付かないことなんだ。まあ、万にひとつ気付いたとしても、どうしたらいいかわかんないんだよ、そこから抜け出すにはね。だからね言われるがままに労働するしか道はないんだ。だって、脳ミソがないわけだから、労働でもってしか会社に貢献できるものはないわけだからね。


 だからね、僕がこの物語に持った満点は結末部分だね。オチは救いようのない絶望感とともに締めてもらいたかったよ。その方がずっとリアリティのある話になったと思うんだよね。


◆i文庫