受験とは


 僕は受験というシステムはなかなか優れたモンだと思ってるんだよね。いや、べつに皮肉とかそういうんじゃないよ、まじで。でね、僕が受験から得たものってのは、たくさんあるんだけど、ひとつに絞るとしたら、「時間をかければいいってモンじゃねーよ」ってことかな。


 まずさ、勉強なんて、誰だってそれ相応に時間をかけられるんだよね。特に受験生だって言われれば、まわりの環境がまずそうなるよね。部活も終わるし、授業も受験モードになるし、普段遊んでるでるような人間までも勉強してるようなオーラー出してきて、机の前に座らざるを得ない空気になってくるし、実際座る時間が長くても苦にはならないだろうしさ。


 僕は高校3年の現役のとき、とにかく今年1年くらいは勉強しろと、無理してでも勉強に時間を費やすように指導されたんだよね。1日に勉強した時間をそれ専用のノートに書いて提出とかさせられてたしね。だから、やってる方も、昨日の日曜日は10時間も英語をやりました、とか報告できるとやってる感があって満足できてたんだ。英語の単語や熟語は、辞書一冊分覚えなきゃいけなんじゃないかみたいなことやってた気がするな。考えるな、覚えろ、みたいに。でもね、やってる内容がごく普通の学校勉強の延長でしかなったんだ。「学校の勉強をしっかりやって基礎さえできていれば、どんな学校のテストでも点が取れる」みたいなこと言われてたからね。とにかく今思えば、乱暴で力任せでその場しのぎな受験勉強だったよ。だから、汗はかくけど筋肉はつかない、みたいな作業だったんだよね。



 で、めでたく浪人することになって、予備校で教わったことは、受験ってモンの仕組みと、ゴールするまでの最短ルートは何かということだね。試験問題なんてものは、学校によって、そのテストの毛色がまったく違うし、通り一辺倒の勉強だけやってて点数取れるわけがないんだよね。点を取るために必要な共通のルールや法則を教えてもらって、プラス自分の場合は何にどう時間をかけるべきかを常に考えられるような環境だったんだ。わけもわからず時間をかるんじゃなくてね。もうこれだけで全然違うよね。


 だからね、目的とかその道程の解析もなく、「とにかく頑張ろう」みたいなスタンスって僕は大嫌いなんだ。受験ってものは、どのライバルとも同等に与えられた限られた時間の中で、いかに最小限のコストで問題解決の確率をアップさせられるかが肝なのに、「とにかく」なんて悠長なこと言ってられないんだよ。まずは何をどう頑張るのか、そしてその理由までしっかり把握すべきなんだよ。そう思うとさ、僕のまわりの受験を経験してない人って確かに「とにかく頑張ろう!」ってよく言うんだよね。「とにかく居残りしてでも頑張ります!」って。あー、多分この人は失敗するなって思いながら、先に帰ってるね。だからそういう人は来年のセンター試験目指して、一年間、受験してみればいいと思うね。


◆2010センター試験<毎日jp(毎日新聞)