営業とは〜どうしてそんなに商品に頼るのか?


 僕はその昔、名刺広告を取ってくるという営業をやってたんだよね。まあ、営業っていっても電話のみだけどね。つまりテレアポだよ。


 てか、名刺広告って知ってるかな。その会社は週刊朝日サンデー毎日とかに掲載してたんだけど、「○○高校 創立100周年おめでとう」とかいう特集記事をつくって、そのページの一部に卒業生が後輩、在校生を励ます意味での「諸君の健闘を祈ります 第70回卒業生 □□株式会社 代表取締役 誰それ」みたいな“メッセージ”と“肩書”を掲載するんだよ。広告としてね。で、その広告を集めるために、その高校の卒業生に片っぱしから電話して、「後輩を励ます意味でのメッセージと協賛金をください」って営業するんだよ。つまり名刺広告ってのは、いわゆる協賛広告だね。だから、普通のサラリーマンなんかに飛び込みで営業するってわけさ。でね、気になる費用は4万5千円くらいだったね。うん、いきなり人が働いてる職場に電話して4万5千円ください、って営業なんだよ。


 で、自慢じゃないけど、僕はそこそこ成績も良かったんだよ。つまり、こんな理不尽な電話で4万5千円の広告を多くの人に売ってたってわけだよ。コツは簡単だね。笑ってもらえばいいんだよ。笑わせればいいんだ。そうやって話してれば、4万5千円という価値が狂ってしまって、「コイツにだったら金払ってもいいかな」って思ってくれるんだよね。つまりさ、一個人として広告に4万5千円も支払うのはバカらしいけど、この営業の人にだったら4万5千円くらいくれてやるよって、思ってもらうかどうかが鍵なんだよ。まあ、これだけ聞くと詐欺師みたいなこと言ってるようだけどね。でも、営業ってそういうもんなんじゃないかな。



 でね、僕が言いたいのはこういうことだよ。僕は今、社会的にもある一定以上の価値を持った商品を売っているんだけど、どうも「どの商品が売れるのか?」「値段設定はいくらにしたら売れるのか?」とか、モノのことばかりに注意を払ってる人間が多すぎるような気がするんだよね。僕のまわりにだよ。「どうやったら売れますか?」とかいう話は一切ないんだ。「何が売れますか?」「あー、こんな商品売れませんね」ばっかり。


 僕は名刺広告のような、商品としてはまったく魅力ないものを売ってた経験があるから、商品の力にすがってモノを売ろうとする姿勢が気に入らないわけさ。だって、営業ってのは、買う側の人を見る力と、そのアプローチの仕方のことだと思うんだよね。


 まあ単なる愚痴だよ。気にしないでくれたまえ。そもそも僕は営業の人間でもないしね。