野村克也著『巨人軍論』感想



『巨人軍論』野村克也


 なんとなく買ってみたんだ。ただし、この本は2006年のシーズン前に発表されてて、それはつまり、野村さんが楽天の監督に復帰し、巨人軍も原さんを二度目の監督に据えて望むシーズン前って時代背景だね。まあつまりは、この当時は「巨人も死んだな」と言われてたけど、2007年からの3年連続ペナント奪取の直前って時代だからね。その辺、懐かしみながら読んでみるといいかもね。


 でさ、巨人軍がどうこうってタイトルが付けられてるけど、内容的には、サブタイトルの要素の方が色濃く出てるね。つまり、「組織とは、人間とは、伝統とは」って部分ね。特に「人間とは」という人間力」って部分かな。


 で、思い出したわけだが、僕の中学のときの部活がかなり厳しかったことは君も知ってるよね。で、そのチームには部訓ってものがあって、毎日練習が終わると、キャプテンがその部訓を順々に読み上げ、全員でその後、復唱するってのをやってたんだよ。
「ひとつ、部活動は人間を創る場である」(キャプテン)
「ひとつ、部活動は人間を創る場である」(その他)
みたいにね。


 で、部訓は全部で5つあったと思うんだけど、1番目にある、この「ひとつ、部活動は人間を創る場である」ってのは、鮮明によく覚えてるんだ。まず最初にこういうことを言ってたなってね。当時は「何を大げさなことを」と思いながら謳っていたんだけど、今となっては、この意味するところが、かなりずっしりと心に響くことが多いんだよね。世の中、技術や知識なんてものは、たいして重要でなくて、その人のことを好きになれるかという「人間力」が人の器なんだなって、大人になってからは、ひしひしと感じるよ。そんで、人間力のあるトコロには、優秀な人間とお金が集まってくるんだなってね。つまるとこと、人間力のある人ってのは、生きてて楽しいはずなんだよ。


 ノムさんも、この著書の中で、かつてのV9時代の巨人には「人間力」がある選手ばかりだったが、今(2006年当時)はどうだろうか、って事例を持ち出してたね。まあとにかくさ、別に巨人が好きだろうと、嫌いだろうと、この本は読んでおいて損はないと思うな。別に巨人軍のことなんかどうでもいいんだ。「組織とは、人間とは、伝統とは」って部分は、誰でも興味はあると思うからね。