キーボードの話


 職場で座席替えがあって、別の席に移ることになったんだ。とはいえ、人間が移動するだけで、パソコン本体はもちろんデスクの中身なんかはそのままという夜逃げのような移動なんだよね。まあ、パソコン内のフォルダやデータなんかは、システムの人がごっそり移動してくれたけどさ。


 でさ、新しい席のキーボードってのが、どうも馴染まなかったんだよね。手応えとかモノのつくり上微妙な感覚が気に入らなかったんだよ。でね、そんな相性の悪いものでカタカタとメールを書いたり、タグをうったりしてても、どうも気分が乗らないわけさ。当然のことだけどね。


 だからね、キーボードを元の席にあったものと交換したんだよ。これまで使ってたヤツを呼び寄せたって具合さ。するとさ、文字をうつことで、俄然テンションが上がるようになったね。文字通り、キーボードの上をダンスをするように指が踊ってくれるわけさ。やっぱり、キーボードってのは大事だね。



 でさ、そこで思ったんだけど、僕らのようにPCに頼りきってる人間にとってのアウトプットってのは、もうキーボードによって左右される部分ってのも大きいのかなと思ったんだ。最近、「アイデアは突拍子も無く生まれてくる」みたいに、散歩中や風呂の中や食事中なんかにアイデアが生まれて、こりゃハッピーみたいなコマーシャルを見たことあるけど、いくらすばらしいひらめきがあっても、形にできないと意味ないよね。この生まれてきたアイデアを、形にするためにパソコンを利用してる人って多いと思うんだ、案外。つまりさ、パソコンの中での作業ってのが、個人のアイデア他人と共有できる具体的な形に落とし込む最初のステップってわけさ。


 そう考えるとさ、キーボードってのは、君の脳味噌とパソコンを繋ぐ唯一無二のブリッジなんだよね。自動車でいったらハンドルみたいなもんだよ。脳味噌の中身がそのままモニタに表現されればベストなわけだが、そんなわけにはいかないから、キーボードをたたいて表示させていかなければいけないわけさ。だから脳味噌→指→キーボードとスムーズな意思伝達ができれば、プラスαのアイデアだって湧き出てくるはずだよね。だから君もさ、iPhoneとかEvernoteとかアイデアメモ環境を整えてる暇があったら、アウトプット環境をもっと充実させた方がいいと思うよ。まじで。