日本人の富と余裕


 もうひとつさ、日本人の生真面目さや誠実さってのも実感したんだよね。ああ、つまりは、海外旅行に出てみて気づいたこととしてね。



 というのもさ、それなりのホテルに泊まったり、超リゾート島のコテージに宿泊したんだけど、どこかしこが壊れていたり、傷んだままになってたりするんだ。ここで重要な部分はね、壊れてて使えないってわけじゃないことなんだ。壊れてるけどまだ使える、だから修理せずにそのままになってるって風なんだよ。目覚まし時計なんかも、てんで時間が合ってないし、ルームサービスのジュースもいつから入ってるのか知らないけどラベルが剥がれてるんだよね。こんなのさ、まず日本じゃあり得ないよね。ホテルにしてもレストランにしても、そのサービスやメンテナンスなんかは、細かすぎて伝わらないくらいのこだわりがあるのが我がニッポンだよね。いたれり尽せりってやつだよ。まあ、過剰な部分がないとは言えないけどね。


 でもね、この日本人の律儀さ、忠実さってのが、今僕らが教授しているそれ相応の富を生み出したってわけさ。で、その富があるが故に、僕のような中流市民でも海外に遊びに行けるんだろうなって。不景気だとか、なんとかマン・ショックだとか、忙しいとか言いつつも、何だかんだ理由をつければ海外に遊びに行けるわけさ。僕のような中流市民でもね。



 そこで思ったのがね、この日本人からすれば観光地と位置づけられる国でのんびりと暮らしている現地の人間は、ニッポンやUSAなんかにバカンスに出かけるような余裕ってあるのかなってね。多分、ないだろうなって思うんだよ。毎日の生活をそれなりに消化することで充分で、他所の国に遊びに行ったり息抜きに行くって発想すらないと思うんだ。まあ僕の勝手な推測だけどね。


 つくづく実感したよ。選択の余地もなく、日本に生まれただけなのに、生きていく上での選択肢や可能性は無限にあるんだなってね。君も「日本」に少しは感謝した方がいいと思うな。まじで。