『逮捕されるまで 空白の2年7カ月』感想


 最近、この事件の初公判が行われたってので、さっそく図書館で借りてきたんだ。ブログのような文章なので、1日でぱぱっと読み終えることができたよ。「殺人犯」を感じさせるようなヘヴィーな部分などほとんどなく、淡々と、それこそ誰かがやっているゲームを横で見ているような感覚で逃亡劇が描かれているって感じかな。あまり著者の「感情」というものが伝わってこないんだよね。それが意図的なものかどうかはわからないけどね。


 とはいえね、この話を読み進めることで、少なからず加害者である著者に哀れみを感じる部分もあったんだよね。「ああ、しんどそうだな」とか「恐かっただろうな」とか「必死だな」とかね。でもね、よくよく考えると、殺人犯にだけ、こういった「表現の自由」があることに疑問も感じたんだよね。被害者側には、この書籍にはおさまりきらないほどの無限大の「自由」があったはずなのに、その「自由」も「夢」も「可能性」も、もう二度と語られることはおろか、実現することはないんだよね。なのに、加害者側の「言い分」だけを、僕らが「知る」ことができるって事実に、居心地の悪さを感じたんだよね。これってフェアじゃないなって。否、フェアとかそういう問題ですらないかもしれない。だからさ、たとえ一瞬でも「哀れみ」を感じたことに対して大きな疑問を感じたんだよ、いかなる理由があっても加害者に同情しちゃいかんのだろってね。


 僕は、この本を読んで、加害者の逃亡がどうこうということよりも、「自由」ってなんだろうって考えさせられたんだよね。被害者ってのは、今手の中にあった自由が奪われ、そして将来的にも多くの自由が制限されるといえるわけだよね。つまり二重に被害者なんだよ。でも、加害者のほうは、定められた刑をまっとうさえすれば、「更生」や「社会復帰」というゴールに向けて、ある程度の「自由」を手にすることができるってわけさ。この立場の違いってものに脱力したんだよね。しかも、この本だって、加害者である著者は、文章はおろか挿絵まで描いているわけだよ。こんな自由なことって許されていいのかなと。法律ってものは、こんな不平等なことを良しとするようにできてんのかなってね。


 でも、こういう僕だって、生きている限りは、被害者側にも加害者側にも成りうる可能性はあるわけさ。だからね、被害者と加害者の関係性ってものを、もっと勉強しておくべきのなかと感じたね。


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