ある社長から聞いたアプローチ方法


 昔、それなりに大きな会社の社長と酒の席でお話しする機会がって、そのとき聞いた話が、今でも鮮明に覚えてるんだ。勉強になったってね。


 細かい話の流れは忘れたけど、まずこちら側の人間が、「世の中には、他人の意見を参考にする人と、自分の考えだけで突き進む人と2種類いて……」みたいなことを発言したら、「いや、それは違うよ」と社長が言うんだ。「この人は“他人の意見を参考にする人”だと決めつけちゃうと、その先にできることは限られてくる。強いて言うなら“他人の意見を参考にする傾向が強い人”ならいるけどね。つまり、どんな人にだって、“他人の意見を参考にする”部分と“自分の考えだけで突き進む”部分が必ず共存してるんだ。多面性があることを忘れちゃいけない」と。「そして、いかにこの人から“他人の意見を参考にする”部分を引き出すように仕掛けるか、また別の場面では、いかに“自分の考えだけで突き進む”部分を引き出すか、必要に応じてこちら側の仕掛けを変えてやることが、ビジネスをする上で一番重要で頭を使わないといけないことだ」とか。まあ酒の席の話だから、はっきり覚えてないけど、だいたいこういうことを言ってたと思うよ。


 つまり、世の中の人間をカテゴライズしてからアプローチするよりも、供給側にとって都合の良い一面を需要側から引き出すようにアプローチするほうが理にかなってるってことだろうね。



 で、これって占いのロジックでもあるんだよね。「あなたは他人の意見を参考にする人です」と言われれば、そりゃまあ、何十年も生きてれば自分の考えより他人のアドバイスを参考にしたこともあるだろうから、具体的にそう指摘されれば、「ああ、確かに、当たってるわ」と思っちゃうよね。それに星座や血液型をベースにある程度一貫性のある「性格の一面」を指摘されれば、「俺は他人の意見を参考にする人間だ」という自覚も生まれてくるから、占いを信じれば信じるほど、当たってるように感じちゃうってわけさ。


 まあまとめるとだね、「この人はこういう人だ」って一面的に決めつけちゃうのは良くないってことだよ。人は相反する思考や傾向を当たり前のように持ってて、都度都度、どの部分が表面にあらわれるかってのは違うっていう、いい加減な生き物なんだよね。だからこそ、ビジネスする上では、必要以上のセグメントをかけるよりかは、どの人にも存在する普遍的な部分を刺激することに頭を使ったほうが良いってことだよ。まあそれが一番難しいんだけどね。