『最高齢プロフェッショナルの教え』感想

■『最高齢プロフェッショナルの教え』>現役最高齢「ピアニスト」室井摩耶子 89歳(2010年時点)


(前略)
 若い人は結果を早く出したいと思うかもしれませんが、早く完成させる必要はまったくありません。

 例えばコンクールで入賞して25歳で華々しくデビューしたAさんと、コンクール入賞後10年間勉強を続けて音楽を深めてからデビューしたBさんがいたとします。Aさんが音楽を深めることを怠ったら、どこかでポキリと折れてそのまま消えてしまうでしょう。一方で地道に音楽を追求したBさんは、壁にぶち当たっても乗り越えられる息の長い演奏家になるでしょう。

 成長は20代で止まるものではありません。30歳になっても、40歳になっても、90歳になっても「昨日より、もっといいものを生み出したい」という気持ちを持ち続ければ、死ぬまでずっと成長することができるもの。

 成長を支えてくれるのが、いろんな経験や体験です。だから思いついたことは何でも試してみて、すべてを“体験のズダ袋”に蓄えておくといいのです。
(後略)


 何年か前から「史上最年少〜」ってニュースをよく見たり聞いたりするようになったんだよね。で、僕はそのたびに、どこか居心地の悪さみたいなものを感じてたんだ。それはもちろん「若さ」という、自分がこれからどう努力してもどんなに幸運を掴んでも決して手に入れることのできない肩書きに対する嫉妬や妬みもひとつの要因だと思うんだけどね。


 まあとにかくさ、でも僕はこの最年少記録ってものがどれだけの価値を持っているのか疑問なんだよ。マスコミが商業上の理由でつくりあげたキャッチコピーなだけだろって。だってさ、これだけ高齢化社会だとかいってるのに、誰かよりも早く何かを成し遂げたからってことに一体どれだけの意味があるのかって思うんだよね。


 だからね、こういう最年長記録とか、「最高齢記録」ってものにもっと注目すべきだと思うんだ。まあ、華はないと思うよ。テレビのネタよりも、新聞の地方面のニュースかもしれないけど、僕らが本当にお手本すべき価値があるのは、最年少の誰かよりも、最年長の誰かなんだよね。だってさ、自分より若い人間が子どもの頃にどういう勉強や練習をしてきたかを今さら知ったところでどうするって話だよ。つまりさ、えっちらおっちら長年、同じことを続けている人の意見や哲学ってのは知っておくべきだと思うな。