足を組まなくなってどうなったか


 昔、健康系の記事を書く仕事をしてときに、「足を組むのは良くない」って教えを受けたんだ。何に良くないかというと、健康に良くないってことだよ。つまりさ、足を組むときって、必ずどちらかの足を上、その反対の足は下って、その人の中で決まっちゃってるんだよね。そのときどきで足の組み方が違うって人は、まあいないんだよ。となるとね、当然身体のバランスも崩れ、どちらかに傾いてくるんだよ。たとえば、右足を上に足を組む癖がついてる人は、身体の右側が上に傾き、結果左肩が下がるって姿勢になっちゃうってわけさ。んで、座ってるときはもちろん、立ってるときや歩いているときにも影響は出てくるんだ。そうやって、身体の左右のバランスが悪くなることで、骨格が云々、血液の流れが云々って理屈だよ。なんとなくイメージできるだろ。


 でね、それを知って、僕は足を組むことをやめようと思ったわけさ。もちろんさ、足を組まなくなれば、ずっと健康でいられるなんて保証はなくて、身体の具合が悪くなるかもしれないゴマンとある要因の一つが減ったに過ぎないんだけどね。でもまあ、せっかく仕入れた情報の一つだし、クライアントが「良い」と言ってる事柄なんで無視せず実践してみようと思ったわけさ。



 でね、結論から言うと、今ではまったく足を組むことはなくなったし、組みたいとも思わないんだ。また、足を組まないことによる不都合なんて何もないんだよ。でもね、多分2ヶ月くらいだったと思うけど、最初はとてもストレスの溜まる時期が続いてたね。ついつい足を組もうとしてしまう自分を制止することにイライラするというか、ムズムズするというかね。まあ、禁煙みたいなもんんかな。タバコ吸ったことないからわかんないけど。


 つまりね僕が言いたいことは、「自分の中の何かを変えよう」と思ったら、それなりのストレスを乗り越えないといけないってことだよ。で、いざその時期が過ぎると、別になんてことない境地にたどり着くわけさ。その最初のストレスを乗り越える強さってものを、僕らは死ぬまで持ち続ける必要があるんだよね。この足を組む組まないにしても、僕は軽いノリではじめたんだけど、途中から意地みたいなものがチラついてきて、「どうでもいいことだけど、絶対成し遂げる」って思って、足を組むのを我慢してたね。でも、こういう積み重ねってのが、その人の強さに変わると思ってるんだ。