勝間和代著『まじめの罠』感想

賢いというのは、ある意味、ひたすら「抜け道」を探すことです。私の中学受験のときの勉強法も、言ってみれば抜け道を探した結果です。


 僕がここ数年、まあ具体的には金沢に帰ってきてから強く感じていることの一つに、世の中にはまじめな人が多いんだなぁーってことがあるんだよね。むしろ、帰郷してのもっともカルチャー・ショックな事柄の一つだよ。「みんな、まじめ!」ってね。だから、この「まじめの罠」って発想、切り口にとても共感でき、自分の考えが偏屈なものじゃないって確信もできたね。


 で、このカツマ本では、学校という型に嵌って勉強をしてきた高学歴の人にまじめな人が多い、みたいなことを言ってんだよね。でも、高校+αくらいで教育を終えた人、つまり「校則」ってものにガッツリ縛られることが当たり前のまま社会に出てしまった人にだって「まじめ」な人が多いよ。小さな範疇でのルールに律儀に律儀に従うってのね。まあ、つまりは、日本人ってみんなまじめってことだろうけどね。ブータンの人とは違ってね。


 で、僕が身近でリスペクトしている人って、見事にアイデアアウトローなんだよね。「うぉー、この手があったか」って発想力をふんだんに持ってる。その上で、階段を一段飛ばし、二段飛ばしで上っていくタイプさ。中にはエレベーターでサーっと上に行くやつもいる。で、まじめな人に、こういうアイデアを口にすると、「階段を一段飛ばしても良いんですか?」「エレベーター使って怒られませんか?」っておっかなびっくり訊かれるわけさ。そんなこと気にしてる時点でもう遅れをとってしまってるし、自分がアクドイ人間のようでぐったり疲れちゃうんだよね。「みんな、まじめ!」ってね。


 で、幸運なことに、これまでの僕のまわりには、風変わりな友人・知人がたくさんいたんだよね。ユニークな発想力を持った人にたくさん出逢えたんだ。僕は元々はネクラで、小さくおさまることを欲しているタイプだったけど、まわりにいる友人・知人から「こんなのもアリだぜ」ってキラー・パスをたくさんもらえたことが大きな財産だね。これだけは間違いないよ。そのおかげで、僕もふまじめな視点や思考を多少なりとも得ることができたんだよ。少なくとも、まじめちゃんは損をするってことくらいの分別はある。高校受験までは、「とにかくがんばる」みたいな、まじめな努力をすることに酔って失敗するタチだったけどね。


 僕が目指すのは、(良い意味で)ふまじめな発想力と、(良い意味で)まじめに努力を継続する人なんだよね。でも、カツマ的「まじめな人」は、(悪い意味で)まじめな発想力と、(悪い意味で)ふまじめに努力しない人なんだよ。この「まじめ」の定義を履き違えている人は、ぜひこの本を読んで欲しいな。でもまあ、ここに書かれていることを、素直に鵜呑みにすることもまたまじめな罠なわけだから、半分くらいは疑いながら、非難しながら読むのがベターなんだろうけどね。


【送料無料】まじめの罠

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価格:777円(税込、送料別)

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
「まじめの罠」とは、何かに対してまじめに努力した結果、自分や社会を悪い方向に導いてしまうリスクを指す。そして、いま、日本社会全体がこの罠にハマっていると考えると、いろいろな謎を解くことができる。あなたは、この罠にハマっていませんか?「究極の優等生」として悩みながら働いてきた著者が綴る、「脱・まじめ」の上手な方法と、そのご利益。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 「まじめの罠」とは何か、そして、なぜ「まじめの罠」はあなたにとって危険なのか(「まじめの罠」とは何か/「まじめに生きる人生」は「幸せな人生」か?)/第2章 あなたが「まじめの罠」にハマってしまうメカニズムを理解しよう(「まじめの罠」を生む外部要因ー日本社会式エコシステムの存在/「まじめの罠」を生む内部要因ー「まじめ」に特化したことによる大局観不足)/第3章 「まじめの罠」の害毒(「まじめの罠」が当事者に与える害毒/「まじめの罠」が社会に与える害毒)/第4章 「まじめの罠」に対する処方箋(失敗を恐れるな/問題設定そのものを疑え ほか)

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
勝間和代(カツマカズヨ)
1968年東京都生まれ。経済評論家。現在、株式会社「監査と分析」取締役、内閣府男女共同参画会議議員、中央大学ビジネススクール客員教授早稲田大学大学院ファイナンス研究科、慶応義塾大学商学部卒業。アーサー・アンダーセンマッキンゼー、JPモルガンを経て独立。少子化、雇用、ワークライフバランス、ITを活用した個人の生産性向上など、幅広い分野で発言を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)