『広告コピーってこう書くんだ!読本』感想


 昔、ミニコミ紙なんかをつくっていた名残みたいなもので、こういう類の本は手にとってしまうわけで、まあ今でも目を通してみると、とても勉強になるんだよね。だから、定期的に読んでしまうだよね。で、読み終わってから、さあいざ実践してみようといたところで、「あ、そういうば、こういう知識っていくら身につけたところで意味ないんだった」って気づくんだよ。何度かこのブログにも書いたんだけど、仕事上のスキル本、特に制作物に対してのノウハウって、どんだけしっかり身につけたところで、ほとんど役に立たないんだよね。君もそう思わないかい。


 というのもね、制作物に対しては必ずOKやGOを出す人間が別にいるわけだよね。まあ、たいては上司と呼ばれる人なんだけどね。で、いわゆる一般的に良いとされるものと、GOを出す上司の趣味嗜好とはまったく別物なんだよね。わかるだろ、いくら本で勉強して自分が良いと思った作品でも、リリースする許可が出ない限り永遠とやり直しになるってことくらいね。つまりさ、仕事を進める上での必要なスキルってのは2種類あるってことだよ。1つは、まあ売上なり業績なり成果が出やすいとされるスタンダードなスキル。もう1つは、上長の許可をもらうためだけのスキル。


 で、重要とされるのは、ほとんどの場合が後者なんじゃないかな。そうなると許可を出す上司と自分とで「良いもの」に対する意識共有ができてるか否かが一番大事なわけなんだよ。つまりは、どちらか一方がすぐれたノウハウ本を読んでいても、行き違いができるばっかりで、良いものなんてつくれないってことさ。となると、こんな一般論の本なんかに書かれていることよりも、上司が持っている制作物に対する価値観を知ることの方がよっぽど意味があるんだよね。


 まあだからさ、僕はもう二度とこういったスキル向上本は読まないようにするよ。少なくとも、自分に関わりのあるジャンルのノウハウ本はもうごめんだね。関わりない分野であれば、はりきって実践しようなんて思わないから、それなりに肥やしにはなると思うんだけどね。まあとにかく、忘れないように強くここに誓っておくからな。


【内容情報】(「BOOK」データベースより)
いいアイデアやコピーは発想法を知るよりも、自分のアタマを普段から発想体質にしておく必要があります。“発想体質”になるための31のトレーニング法。

【目次】(「BOOK」データベースより)
序章(はじめに「発想法ではなく、発想体質を」。/「なんかいいよね」禁止。)/第1章 生きたコピーの書き方。(なぜ「たくさん」書かなければいけないか。/一晩で100本コピーを書く方法。/ボディコピーの書き方(超カンタン版)/なぜ「短く」書かなければならないか。「描写」じゃない。「解決」なんだ。/人はコピーでウソをつく。/「アイラブ東日本」のウソ。/書き手のヨロコビ、受け手のヨロコビ(二毛作ジェルのワナ)。/葉っぱから森をつくろう。/おじいちゃんにプレゼントを選ぼう。)/第2章 もっと伝えるために。(「原稿用紙」から世の中へ。/みんなが言いたいことを言わせてあげる。/オールブラックス/日本代表/スキがあるほうが、よくモテる。/カタチだけの納得。ホントウの納得。/ポジティブでなければ、ネガティブアプローチじゃない。/いいメチャクチャ、悪いメチャクチャ。/ダメ出しを制約と思うか、ヒントと思うか。/本当にすごいアイデアって(小さな工夫)。)/第3章 コピーを超えるコピー。(正論こそサービス精神をもって語ろう。/「1対1」と「1対100万」の違い。/企画書だけうまくなってはいけない/そりゃそうだ。そういえばそうだね。そんなんわかんない。/「好きだから、あげる。」はなぜ名コピーなのか?/80年代は納得の時代、90年代以降は空気の時代。/剣豪コピーと将軍コピー。/言葉はキャラクターである。/平凡と非凡。平凡と普遍。)/第4章 広告的「アタマのよさ」。(「くり返すことができる」が、プロ。/エンジンとガソリン。)

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
谷山雅計(タニヤママサカズ)
コピーライター、クリエイティブディレクター。1961年大阪府生まれ。東京大学教養学部アメリカ科卒。84年に株式会社博報堂に入社。その後、97年に有限会社谷山広告を設立。現在まで一貫して広告コピーを書き続ける。おもな仕事に、東京ガスガス・パッ・チョ!」、資生堂/TSUBAKI「日本の女性は、美しい。」、新潮文庫「Yonda?」、日本テレビ「日テレ営業中」、キリンビバレッジ/生茶などがある。TCC賞、朝日広告賞、毎日広告賞、新聞協会広告賞など受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)