乙一著『箱庭図書館』感想


 僕は、乙一氏をリスペクトする作家の一人として崇めてるんだけど、最近どうも違和感を感じることがあるんだ。それは、氏が時折みせるユーモラスな一面(文体)ってのが、どうも受け付けられないんだよ。もう徹底してシリアスで、せつない物語だけ描いてほしいよって。『夏と花火と私の死体』はじめ、『暗いところで待ち合わせ』『GOTH リストカット事件』みたいなやつね。


 てな思いを抱いてたんで、この作品も、「う〜ん」と思ってしまう部分が多々みられたし、オムニバス形式の短編なんだけど、どうも作品トーンがばらついてて、いまいち楽しめなかったんだよね。それでも、さすがに後半の表現力や展開力には、ぐっと引き込まれるものがあり、「まあ、それなりに良かったかな」という思いで「あとがき」を読んでみたわけさ。で、ちょっと驚いちまったね。


 この単行本は、一般作家の描いたボツ小説を乙一がリメイクするという、いわゆる企画本だったわけさ。音楽のカバーとか海外ドラマのつくり直しなんてのはよく聞くけど、小説をリメイクするってちょっと聞かないよね。まあこのあたりの発想力と、実際にやってのける執筆力ってのは乙一氏らしいなと。さすが僕がリスペクトしてるだけあるなとね。


【送料無料】箱庭図書館

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価格:1,365円(税込、送料別)

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
少年が小説家になった理由。コンビニ強盗との奇妙な共同作業。ふたりぼっちの文芸部員の青くてイタいやりとり。謎の鍵にあう鍵穴をさがす冒険。ふと迷いこんだ子どもたちだけの夜の王国。雪の上の靴跡からはじまる不思議な出会い。集英社WEB文芸「RENZ ABURO」の人気企画「オツイチ小説再生工場」から生まれた6つの物語。

【目次】(「BOOK」データベースより)
小説家のつくり方/コンビニ日和!/青春絶縁体/ワンダーランド/王国の旗/ホワイト・ステップ

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
乙一(オツイチ)
1978年福岡県生まれ。16歳のときに「夏と花火と私の死体」でジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞し、翌年デビュー。2003年『GOTHリストカット事件』で本格ミステリ大賞を受賞。ミステリ、ホラー、青春恋愛小説などさまざまなテイストの作品を発表して広く読者を得ている。現在、複数の名義で活動中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)