チャップリン「独裁者」感想


 少し前にテレビ番組でちらっと取り上げられており、気になったんで全編観てみたんだよね。ちなみにこの映画は、ヒトラーナチスの世界を中心に描かれた内容なんだけど、アメリカで初公開されたのが1940年というのがミソなんだよね。というのもね、公開前年の1939年には第二次世界大戦が勃発しているとはいえ、いわゆるヒトラーの脅威が全世界に知れ渡るのはもう少し先の話なんだよね、歴史的には。にも関わらず、チャップリンは、ヒトラーナチスの脅威に対して警鐘を鳴らすような、この映画をつくっていたってわけだよ。時代を読む力のある人ってのは、どんな分野でも活躍できるってことだろうね。


 この映画は、ラストシーンのシリアスな「演説」が名場面とされており、僕もそのシーンだけ観ていたので、全編通して真面目に戦争を描いた作品なのかなと思っていたけど、まあほとんどがコミカルなものだったね。でね、チャップリンなんて、もうヒトラーと同じように歴史上の人物だと思っていたけど、こうやって映像で観ると、なんともノスタルジックな懐かしさを感じたね。はじめて観たような気がしないってやつだよ。で、すぐに気づいたんだけど、チャップリンの演技や演出って、僕らが子ども時代のバラエティやコントでよくよく目にしてた演技や演出そのものなんだよ。具体的に連想できたのは、細かな動きや表情がザ・ドリフターズ加藤茶そのものだと。もちろん加藤茶チャップリンを真似ているんだろうけど、「あ、これか! 加藤茶のキャラクターってほとんどがチャップリンのオマージュなんだ」と思っちゃったね。だから、白黒で字幕の映画にも関わらず、古めかしい外国の映画という、よそよそしさはなかったな。何かのルーツを発見するってのは興奮しちゃうよね。


 笑いに対するルーツを知りたかったらチャップリンを観てみるのもいいかね。ミュージシャンがみんなビートルズを真似ているのと同じように、きっとより深みのある笑いを味わうことができるようになると思うよ。


ヒトラーに真っ向から立ち向かった傑作。ユダヤ人を迫害するトメニア国の独裁者ヒンケル。突撃隊が押し入った床屋のユダヤ人はヒンケルと瓜二つで。その偶然がとんでもない事態を招き寄せる。発表当時、ドイツと同盟関係にあった日本では上映禁止となった、笑いと風刺の命を賭けたプロテスト映画。