君はチームのために尽くせるか?



野村再生工場 ――叱り方、褒め方、教え方』野村 克也


 まあ、ノムさんに対しては、特別に好きということも嫌いということもないんだけど、キャラとしては注目せざるを得ない人物だよね。僕はこういう何事においてもしたたかな知将にも一目を置いているだよ。


 で、まあ、つらつらと読んでみたのだが、その中で、選手とチームの関連性において、少しおもしろいと感じたことがあるんだよね。ノムさんは、選手はチームのためにプレーすべきだみたいなことを強く主張してるんだよね。つまりフォア・ザ・チームってやつだよ。

 強い組織をつくるために、もうひとつ徹底させなければならないのが、「フォア・ザ・チーム」、すなわちチーム優先主義だ。
(中略)
最近は「まず自分が打つこと。それでチームに貢献したい」とか「自分が勝ち星をあげれば、それだけチームの成績も上がる」といった発言をする選手が多い。とくに弱いチームの中心選手に多々見られる。
 だが、楽天のような弱いチームの選手がそういう考え方で野球をやっていては、勝てるわけがないのである。
(中略)
実際、私の経験からいってもチーム優先の考え方で打席に臨むほうが結果もよいことが多いのである。


 でもね、僕が尊敬する落合やイチロー、そして世界の貞治王なんかは、まったく正反対のことを言ってるわけさ。つまりは、選手は自分のためにベストを尽くせばいいってことだよね。

イチローはおもむろに王監督に訊ねた。>「現役時代、選手の時に、自分のためにプレーしていましたか、それともチームのためにプレーしていましたか」(中略)>王監督は即答した。>「オレは自分のためだよ。だって、自分のためにやるからこそ、それがチームのためになるんであって、チームのために、なんていうヤツは言い訳するからね」


◆『Sports Graphic Number』674号<○□△に行ってきました。 (2007.03/20)

 私は、監督になってからの落合の選手に対する目差しが好きだ。『週刊文春』(2006.12.21号)の阿川佐和子氏によるインタヴューでは、次のような印象的な言葉を語っている。

 『みんな「優勝するためにやれ」って言うでしょう。俺、そんなこと一度も言ったことはない。「お前ら、自分の生活を守るためにやれ。球団のために野球するな」と言ってる。いくら球団のためにやったってユニフォーム脱ぐときは脱ぐんです。一年でも一日でも長くユニフォーム着るためには、自分がうまくなるしかない。だから、ピッチャーだったら一イニングでも余分に放れ、バッターだったら一本でも余分にヒットを打てと。それでゲームプランを立てて勝ちに持っていくのは監督の仕事なんだ。』


◆「プロ野球」を知る人〜落合博満日経トレンディネット (2007.01/21)


 別に僕はどっちがどうだってことを比較して言いたいわけじゃないんだよね。一口に名選手、名監督といっても、いろんな考え方があるってことを言いたいんだよ。わかるかな。強いて言えば、どっちも正しいし、ゴールに向かうためのプロセスにはいろいろあるから、誰かが言ったことをそのまま真に受けることはないんだよってことだね。まあそれに、楽天というチームと、日本代表や中日というチームとでは、マネージメントの考え方も違って当然なのかもしれないしね。でもヘソマガリの僕は落合やイチローの考え方がかっこいいと思うんだよね。


 ちなみに、イチローと王の会話が掲載されていた「Number」、落合と阿川佐和子のインタビューが掲載されていた「週刊文春」、どちらも購入した記憶があるんだけど、引越しのときにどっかいっちゃたみたいだね。寒い部屋の中4時間ほど探したけど、見つからなかったよ(まあそれでも、ネット上にまさに使いたいと思ってた部分が転がってるわけだから、便利な世の中になったな)。つまり今僕の手元には、フォア・ザ・チームについて語っているノムさんの本しかないってわけだよ。ま、別にだからどうってわけじゃないんだけどね。